(403) “自分のことだけでなく、ほかの人のことも顧みなさい。”

 20世紀初頭に大変活躍した「マリアン・アンダーソン」というアメリカ人女性歌手がいました。彼女は世界中を股にかけて活躍し、ルーズヴェルト大統領の時代にホワイトハウスに招かれて歌ったり、イギリスのエリザベス女王の前で歌ったりもしました。そんな彼女が、ある時の記者会見で「あなたの歌手人生の中で、もっとも光栄に感じた瞬間をお聞かせください」と問われ、記者たちが固唾をのんでコメントを待っていると、彼女は顔を輝かせながらこう答えたそうです。「歌手として最も光栄に感じた瞬間、ええ、それは今でもはっきりと覚えています。それは私がオーディションに合格して、歌手としてスタートできると分かった時に、自宅まで走って行って、『お母さん、もう明日から他の人たちの洗濯物をしなくてもいいのよ!』と伝えた時です。」  私たち人間は皆、基本的に『自己中心的』です。まず自分自身の状況が整ってから、ようやく他の人の事を考え始めるものです。しかし実際は「他の人のために役立っている」と感じられる時の方が、自分の事ばかり考えている時よりもずっと喜びと充実感を得られるのです。そして「生まれながらの性質」を改めるためには、それなりの『訓練』が必要です。元来の臆病な性質を変えたければ、訓練によって勇敢さを身に付けなければなりません。生まれつき否定的に物を考えてしまう人は、肯定的な考え方ができるよう意識の変革が必要です。同様に「自己中心」な私たちは、他の人の事を思いやることを意識的に学ばなければ、いつまでたっても自己中心なままになってしまいます。  キリストは「神のご性質」を持った存在であったにもかかわらず、人の姿になって現れ、それだけではなく、私たちの間で『仕える者』のように振舞われました。それは本来私たちも「他の人の最善のために仕えること」を喜びとするように造られていることを思い起こさせるためだったのです。神が私たちに『自己最高の人生』を送ることができるように助けることを喜びとされているように、私たちも「他の人が必要としている助けを与えること」を通して、より大きな喜びや満足を経験することができるのです。  ぜひ今日から「自己中心な自分」を「他の人の必要に仕える存在」へと変える訓練を、イエス・キリストと共に始めてみませんか?